坂道、ほそ道、散歩道

リヴァープレス社 著者:四戸正子
2018年6月26日発行 B6判本文100頁 本体800円+税

私事ではあるが、著者・四戸さんとは、
3年ほど同じ文章講座に通っていた。

月2回の講座で、課題として800字の文章を書く。
彼女が書いてくる課題の余韻の深さに
いつも唸らされた。

子供の頃から最近に至るまで、昔のことを
よく覚えていて、よく見てきたのだと思う。
風景も、動作も、心情も、描写が見事なのである。

本書の序文、育った家の井戸のくだりは、
ますます私事で申し訳ないが、私の妻にも
共通する記憶であり、少女の心情を思うと
胸が締め付けられる。

「畝」の一篇に描かれる、幼い頃の心情と
いま振り返ってそれを眺める大人の心情、
通底する切なさに涙が出る。
似たような思いを持って、私は20歳で上京した。

先述の文章講座で、読み手の共感を得ることが大事だと、
何度も教わっている。
四戸さんの文章には、いつもそれがある。
私にはまだ書けない。