wrapping paper

べつばら出版(自主出版)
奥川純一
2021年5月 第1刷発行 A5判224頁 本体1,800円+税 

この写真集の、わかりやすくはないけど
妙に面白く、フックに引っかかってくる感じは
何に由来するのか、その説明はたぶん
作者・奥川さんご自身のウェブサイトを読むのが
一番よく伝わるし説明自体が面白い。

それでもあえて引用して伝えるとすれば、

小さな頃から本が苦手でカフカの変身ですら読み終えることが
できなかった自分の本への入り口を開いてくれたのは
星新一さんの本で、短編集で読みやすく何冊も買いました。
わからない章があっても次に楽しい章があったり、
短いがために見直すことも億劫ではなく、なんか気になって
何回も観てしまう、写真集もこういう感じだったら、
かまえることなく読みやすいのに…そう思いました。

ここが肝なんじゃないかと思う。

写真集は私にとって、ハードルの高い書籍のひとつだ。
いや、風景とか人とか動物とか仕事ぶりとか、
テーマがはっきりしていれば全然読めるし見ていて面白い。
問題はアーティスティックなやつである。

写真家自身の裡から、なにか湧き上がる
伝えたいものがあるのであろうことは想像がつくが、
わかるかと言われればわからない。
なにやら宙に浮いている話のようで、いや本来そういうもの
なのだろうが、掴みどころがなさ過ぎて途方に暮れる。
絵画も彫刻も、現代抽象美術はさっぱりわからない。

そういう私には、wrapping paperのざっかけなさというか
身近な感じというか、紙質の違いによる写真の受け取れ方、
読め方(あくまでもこっちサイドの問題なので受身形)の
変わり方とかはとても手ごたえがあってつかみやすく、
写真そのものは決して説明的ではないのだが
なにかが読める感じがして面白い。

感覚の問題なので、この感想文も何を言っているのか
さっぱりわからない方も多かろうと思うが、
ぜひ本書を読んでみてもらいたい。
読むものとしての写真集なんてものもこの世にはある、
ということがとてもよくわかると思う。
その意味で、この本は紛れもない読み物である。