岩波書店
関沢正躬
2013年3月15日 第一刷発行B6判・214頁 本体2,200円+税
物理、ことに力学が本当に苦手だった。
建築を仕事にしている人間が言って良い台詞ではないが、
なんとしても頭に入って来ないのである。
いまでこそ仕事に必要な部分は理解したが、
力学全般に関しては苦い気持ちがある。
そこで本書だが、不変量、運動エネルギー、
重力加速度、遠心力など各章ごとにテーマが決まってるが、
一瞥すると教科書同様の説明と数式と図解が載っている。
あまりにも懐かしい教科書風の紙面に、
苦い気持ちを思いだして悄然としてしまったが、
読み進めてみると教科書とは当然違う。
なにしろ、章のテーマの引き合いに出している
現実の事例が面白い。
田淵のホームランまで俎上に載っている。
鉄一貫目と綿一貫目ではどちらが重い?とか、
なぞなぞなら引っ掛け問題となるところを
大真面目に分析している。
著者は真面目に、力学のことを面白く伝えるべく
努力して文の構成を考えたのだろうが、
読んでいる身としてはたんに面白い。
数式より先にエピソードを覚えてしまった。
こういうふうな入口から力学に入っていたら
もう少し違った景色が見えていたように感じる。