クマが出た! 助けてベアドッグ

岩崎書店
太田京子 著
2022年4月30日 第2刷発行 A5判・152頁 本体1,300円+税

あたたかくなり、今年もクマの目撃情報が
あちこちで聞かれる季節になった。

山にでも行かなければ
クマを見かけることはない…と高をくくっていたが、
近年はこの盛岡でも
駅近くや住宅地などで、目撃されている。

しかし思い起こすと、子どもの頃は
毎日のように山を駆け回っていたが、
クマと出会ったことは一度もなかった。
数十年経ったいま、人間とクマとの距離は
ずいぶん近くなったようだ。

原因は様々だが、山を開いての開発や廃棄物の問題など、
人間も原因を作っていることは否めない。
クマを悪者にすることなどできない。

そのクマと、人間の共存のために
「ベアドッグ」という職業犬が存在する。

軽井沢にあるNPO法人ピッキオが
ベアドッグとともにクマの保護管理にあたっており、
クマを殺すのではなく
人里に近づいたら怖い思いをする、と
クマに覚えさせる方法で
人間とクマの棲み分けを図っている。

クマの匂いを嗅ぎ分けて探して吠え立て、
山へ追い払うのに大活躍のベアドッグだが、
一人前になるためには素養もさることながら
たくさんの訓練が必要だ。

本書は2015年、ベアドッグが初めて
飛行機に乗って日本に渡るところから始まり、
ハンドラー(ベアドッグに指示を与えるクマの専門家)と
ベアドッグの訓練や活動に密着し、その様子が紹介されている。

ベアドッグの成長、ハンドラーとの信頼関係に
感動や驚きを覚えるのはもちろん、それだけでなく
クマとの共存についても考えさせられる。

本来、クマは自然の一部。
木の実を食べ、種の混じったフンをすることで種をまき、
森の木の分布を広げる役割を果たしているそうだ。

一方、クマの個体数はどんどん減っており
九州では絶滅、四国でも絶滅危惧種という。
その未来は決して、明るいものではないと思う。

正しく怖がるため、
そしてクマと私たちの未来を考えるための
きっかけとなる一冊。