「書肆みず盛りの知りたい世界」第12回、
さいとうゆきこさんの回が終了しました。
街のあちこちでさいとうさんの絵を見かけるので
わりと身近に感じていましたが、今月開催中の
原画展でいろいろな描きかた、画風を目の当たりにして
さいとうさんの懐深さと言いましょうか、
表現の多様さがとても楽しい展示なのですが…
その源流のようなものを、今回のトークでは
はっきりと感じさせて頂きました。
大学で美術を学んでいたときも、
卒業後に社会に出てからも、
ご自身の中にある程度の意図と意思はありながらも
成り行き、巡り合わせに対していちいち抗わず、
いまの希望とは違ってもその流れなりの
面白そうな部分、楽しそうな部分をみつけよう、
楽しもうという軽やかでオープンな姿勢。
とても感銘を受け、素晴らしいことだと思いました。
たとえば大学の研究室も、版画を希望したものの
倍率が高く、染織の方向へ進むことになったけど、
だからやる気を失うというのではなくて
それはそれで楽しかった、得るものが大きかった、とか。
そもそも、専門性を深める方向ではなく
さまざまな美術の面白さを体験できるように
美大ではない大学の美術コースを進路に選んだ、とか。
父上が転勤族だったために転校が多かった、という
生い立ちもあいまってか、視野の広さを随所に感じました。
考えてみれば、中学生が高校の、高校生が大学の、
大学生が就職などの、未来を決めるとき、
その未来についての経験があるケースなんか
ごくわずかなはずですよね。
そのわずかな経験の中からでも生涯かけて歩むに値する道を
選ぶことの出来る幸運な人も中にはいるでしょうけれど、
たいていはやってみてから始めて面白さを知るものです。
その意味で、さいとうさんのように視野を広くもって、
成り行きでも体験してみて面白さを知って、
自分がハマるべき道を探るのは本当は良いやり方だと思います。
学校教育の中ではなかなか難しいことですが、
積極的な受け身、とでも呼ぶべき面白がりかたが
とても大事なのかもしれない、と感じました。
その結果さいとうさんのように、
線だけで描くノスタルジアに溢れる美しい風景絵も、
水彩で描く淡いけれど細密な美しい植物画も、
それとはまた違うはっきりした色合いの美しい風景画も、
これは何?と目を引く愛らしい想像上の生き物の絵も、
いろいろと面白がって描けるようになるならば、
それはとても素敵な道ではないでしょうか。
なにより、こんな小難しいことを思わなくても、
さいとうゆきこさんの絵も、妹さんである
Atelier yarmさんのアクセサリーも、見ていて
とても明るく楽しいのです。
作るご本人が楽しんでいるのがにじみ出ているように見えます。
かろやかで朗らかな作品とお人柄に触れながら、
楽しくお話を伺えてとてもリラックスした回になりました。
さいとうゆきこさん、お越しくださった皆様、
本当にありがとうございました!!