たんぽぽの秘密

雷鳥社
森乃おと
2020年3月10日初版発行 四六判・176頁 本体1,600円+税

たんぽぽの花は春のものと思っていたが、
今では一年じゅう見られる花になってきている。
通年咲くセイヨウタンポポがだいぶ広がったためらしい。
意識して見ると確かにあちこちでたくさん、
常に咲いている。

この「意識して見る」のが、やっぱり大事なのだろう。
たんぽぽなど珍しくもない、と思ってしまっていたが、
この本を読むとそれどころではないことを思い知らされる。

世界的に見れば日本のたんぽぽは珍しい生育環境にあり、
研究者から注目されている、とか。
たんぽぽの花は小さな花弁(花びら)が、たーくさん
集まってああいう花なのだと思っていたら、
その小さな花びらと思っていたものが実は一つの花で、
その集合体であるのだ、とか。

知ってました?

読んでみるとかなり深い、という本を好んで仕入れてきたが、
この本もだいぶ極め付きに深い。

そういう本だと、かなり学術的な難しい論文を
読むことになるのかと思いきや、
この本はそうではない。

表紙から可愛らしく、春らしい感じだが、
中身も読みやすく、写真は見やすく、
イラストが美しい。
内容も学術的・科学的な分野から、花言葉とか
たんぽぽにまつわる故事や文学の紹介コラムなど
まったく飽きさせない内容で、
読んでいるうちにたんぽぽに詳しくなっている、
という感じである。

こういうところから身近な自然に目が向いて、
見慣れた景色が違って見えてくるところが
科学の本の良いところである。