エクスナレッジ
久保田裕道
2023年8月16日初版発行 A5判・168頁 本体1,800円+税
2018年に出ていた『日本の祭り解剖図鑑』に
新たな祭りを加えて再刊されたもの。
わずか5年で増補とは、祭りの話はみんな好きなんだなあ。
本書では、都道府県で北や南の端から順に紹介するのではなく、
季節別になっている。
(とはいえきちんと47都道府県から選出されているのも良い)
祭りには成り立ちと歴史があり、しきたりや行事にも
意味や理由がある。この本ではそのことをまず最初に
きちんと解説してあるので、季節順に紹介されることが
とても自然なことだとわかるようになっている。
もう本の構造からして、祭りに対する真摯さが伝わるのである。
表紙の絵がねぶた祭りなのだが、本文中で紹介される
青森の祭りは八戸市のえんぶり。
各地には、紹介した以外にもたくさんの祭りがあって、
昔から人々は豊穣や息災、多幸を祈って来たのだよ、
ということがよく伝わってくる。
各地の祭りはイラストでたくさん描かれているのも良い。
祭りの行事のように日頃は目にしない身近でないものは、
写真で一瞬だけ切り取ると、とても縁遠いものである雰囲気が
ひしひしと伝わってしまう。
その点イラストだと、動きや色合いや雰囲気に
想像の余地があって、すごく身近でノスタルジックにも感じられる。
イラストレーターは瀬川尚志さん、祭りや仏像、歴史関係の
装画や表紙画を多く手掛けておられて、線画の雰囲気がとてもいい。
岩手からは遠野まつりが紹介されている。
もともとは遠野八幡宮の例大祭だが民俗芸能のフェスみたいに
いろいろな民俗・伝統芸能が見られる、と紹介されている。
灯台下暗し、とは痛感しているけれども、それでもやはり
遠野まつりがそのように見られているとは思っていなかった。
なんか、遠野には民俗・伝統芸能がたくさんあるのが当たり前だと
思ってしまっていたのである。
というか、そもそも【祭り】の英語が【festival】である。
語源的には合っている。
こういう本を持って祭りを見ると、ただの物見遊山ではなくなって
解像度が上がり、楽しさが段違いになると思う。
岩手県内でもたくさんの祭り、芸能がこれから秋にかけて催される。
いくつ見られるだろうか。