第19回「書肆みず盛りの知りたい世界」終了しました

天気は良かったですが冷え込んだ土曜日、
アンティーク百萬堂主人・伊藤喜典さんに
お越し頂いて「書肆みず盛りの知りたい世界」を
開催しました!

百萬堂さんは喜典さんのお父様が始めた
古道具のお店なので、もう半世紀以上の歴史を
お持ちだった、というところから伺いました。

戦後まもない時期に、本当に古い道具、実用品を
商うお店だったそうですが、曰く
「ゆりかごから仏壇まで」が本当に置いてあった、と。
今と違って、新品が山ほど、どこにでも売ってる、
という時代でもなかったので需要はあったそうです。

家業としてすでに古道具屋さんに育った喜典さん、
幼少の頃に、倉庫の中にあった宝船の模型の帆が
頭に落ちてきて怪我したとか、仕入れて置いてあった
古道具で遊んだりしていたのが原風景とか。

そうして商う親御さんの姿を見て、当然のように
古道具屋さんを志向したのかと思いきや、
「最初は嫌だった」とのこと。
「新しいもののほうがいいもんねえ…」という
心の声のようなつぶやきには笑ってしまいました。

とはいえ会社勤めも性に合わなかった喜典さんは
若いうちにお父様のお仕事を手伝いだします。
仕入の市場にも同行したそうですが、喜典さんが
良いと思うものをお父様は特に興味を示さず、
お父様が良いと思うものはよくわからなかった、
ということで、最初から独学で善し悪しを
勉強していったのが始まりだったそうです。

刀や甲冑、書画や茶道具に仏教美術などを扱うのは
「古美術」商で、喜典さんが進んでこられた道は
本当にもっと身近な「古道具」を扱ってきたので、
そこまで高額なものは置かない、ともおっしゃっていました。

ものすごく高額な美術のほうへいくと、
その作品の善し悪しにかなりシビアになったり、
しばしばお金や名声への慾が絡んで事件になったり、
シリアスな感じがどうしても出てしまいます。

でも百萬堂さんは、ご自分が「良いな、面白いな」
と思うものを仕入れて、
それを同じように面白がってくれる人が買ってくれる、
これがなにしろ面白いのだそうです。

50万円のものがポンッと1点売れるより
1万円のものが50点売れる、50人の方が楽しんで買って
なんならまた来てくれることが楽しい、と。
喜典さんご自身とお店のゆったりした感じと
楽しい雰囲気は、そのあたりから生まれたようですね。

仕入れや販売のために毎月市場に通って、
そこで起こること、見聞きしていること、
遺品などの整理で買取に伺う先で起こること…
ときには盗品を持ってくる奴がいてすぐ通報したり、
スリリングなお話も飛び出して、
古道具屋さんの日常は本当におもしろい!

あまり他では聞けないようなお話をたっぷり伺って
笑顔の絶えない2時間でした。
百萬堂・伊藤喜典さん、お越しくださった皆様、
本当にありがとうございました!