第23回知りたい世界、終了しました!

今月の「書肆みず盛りの知りたい世界」は
岩手県立博物館学芸員・近藤良子さんを
お招きしてお話を伺いました。

岩手県立博物館では現在
「驚異の部屋」というおっもしろい企画展を開催中で、
近藤さんはその担当学芸員さんです。

まずは「驚異の部屋」を企画した意図から伺うと、
県博には39万点もの資料が収蔵されているけれども
展示室に出ている資料は2,000点ほど!
たったの0.5%しか、普段は人の目に触れていないんですね。

収蔵庫に眠る収蔵品・資料をあらためて見て、
やっぱりこんなに面白いんだからいろんなものを
見て頂きたい!というところから始まったのが
今回の企画だそうです。

昨年お越し頂いた鳥担当の学芸員・髙橋さんが
おっしゃっていたのは、国内トップレベルの剥製が
こんなにたくさん収蔵されているんだから
もっとたくさんの方に見て頂きたい、ということ。

専門的に調査研究しているひとたちが
見てもらいたい!とまで思うモノなんですから、
そりゃおもしろいに決まってますよね…

近藤さんの担当する民俗部門は、収蔵資料の数が
約1万4千点ぐらいだそう。
約39万点からすれば少なく感じる(約3.6%)ですが、
その14,000点をすべて覚えておかなくてはならない!

これは、他の博物館など施設からの問い合わせ、
寄贈を申し込まれた際にダブりや貴重度の判断、
地震などの災害時には優先度に合わせて移動させたり
保護したり、という対応のためには、
いちいちデータベースで探っていられないので
暗記が必須だとか…
あまりの途方のなさに、ご参加の皆さんからも
「…ええぇぇ…」と声が漏れていました。

岩手県立博物館は“総合博物館”なので、調査・研究や
取扱の分野も多岐にわたります。
部門は具体的に6つあるそうで、
地質(化石とか恐竜とか)
考古(土器とか石器とか)
歴史(甲冑・古文書とか中近世とか)
民俗(信仰とか鹿踊りなど伝統芸能、漆など伝統文化とか)
生物(言わずと知れた生き物のこと)
までの5つあたりはなんとなく見当が付くんですが、
「文化財科学部門」というのもあるそうです。

内容の一部を伺うと、収蔵している資料は
ほったらかしだと当然、劣化します。
光も湿気も寒暖差も、物質にとってはダメージになる。
また「文化財害虫」とされる虫などもいて、
資料を食べちゃったりもします。
“紙魚”なんていう風雅な名前の、紙を食う虫も
住宅にばかりいるわけではないので油断できません。
そういうダメージから収蔵品・資料を守るべく
日々管理しているのが文化財科学部門。
いわゆるバックオフィス業務ではなくて、
ちゃんと一部門になっているんですね!

また、東日本大震災の時には沿岸の博物館、美術館や
資料館の資料が海水を含んで大ダメージを受けました。
それでも失われなかった資料の脱塩処理とかも、
日本全体で見ても過去最大規模の対応があって、
そういう部分も体系的に記録したりもなさったそうです。

県博は駐車場から建物に着くまでに100段もある階段を
登らなくてはならなくて、時にぜいぜい言いながら
到着するんですが、高所にあって水や湿気の害の恐れが
たいへん少ないあの立地はけっこう貴重なんですって。

研究対象のことを調べているだけではなく、
収蔵後の資料の管理にまでこれほどの業務、気遣いを
常に向けていなくてはならないとは…
途方もない、とてつもない仕事ぶりに圧倒されました。

……ここまでで開始15分ですからね。
もうたまりません、ご参加の皆様もいきなり
エンジン全開で集中モード!

もちろんその後も、近藤さんのご専門である
動物に対する民間信仰のこともたっぷり伺い、
それを調査していく過程で起こったエピソードなど、
聞いても聞いても終わらない「へえぇぇ~!!」な話が
ずっと続いてあっという間に2時間が過ぎました。

ほんと、博物館の方の話はひと晩じゅう聞いていられる…
それに髙橋さんのときもそうでしたが、近藤さんも
お話が巧い!!

やっぱり専門的に研究している知識の広さ深さと、
それを面白がって続けている姿勢がないと
こうは語れないんじゃないか、とひしひしと思います。
良い世界だなあ、としみじみ思いながら
充実した時間を楽しませていただきました!

博物館の企画展「驚異の部屋」も本当に面白いので、
当店の展示をご覧の皆様にも「行ってみてください!」と
いつも猛プッシュしているんですが、
本当にぜひご覧になってください。
ゴールデンウィークの大きな楽しみになるはず!!
ウチの展示も手でさわれる資料をお借りしているので
こちらも是非!!

近藤さん、ご参加くださった皆様、
本当にありがとうございました!