宇宙はどのような姿をしているのか

ベレ出版
平松正顕
2022年1月25日 初版発行 四六判・371頁 本体2,000円+税

私が子どもの頃は、水金地火木土天海冥、と
呪文のように唱えて太陽系惑星を覚えた。
(20年ほど前、冥王星は準惑星に区分が変わり、
呪文は水金地火木土天海、で終わるようになった。)

“宇宙”と言われてすぐにイメージされるのは、
この「太陽系」の範囲ではないか。

実際には、私たちのいる太陽系は
「天の川銀河」と呼ばれる、
数千億個の星の大集団(これを銀河と呼ぶ)の、
わりあい外縁に近いところなのだそうである。
つまり銀河の辺境。

この銀河が、宇宙には2兆個ほどある、という説も
あるらしい。惑星が、ではない。銀河が、である。

宇宙は途方もなく広い、とは知っていたが、
想像をはるかに超えて途方もない。

本書の最序盤に、太陽系を200億分の1に縮めて
大きさを例えるくだりがあって、
これを最初に頭に入れるとかなり掴みやすくなる。

ものすごく小さな縮尺に思えるが、200億分の1にすると
太陽の大きさが約7cmになる。
ちょうど野球のボールぐらいなので、野球場をイメージする。
太陽である野球ボールをホームベースの位置に置く。
地球は大きさが約0.67mmになり、位置はホームから約7.5m、
ホームとマウンドの中間よりちょっとホーム寄り。

こうやって例えたとき、海王星の位置はホームベースから
約220mになるのだそうだ。
これまた、思っていたよりはるかに遠い。
大谷翔平のホームランでも届いたことはないであろう。

地球の大きさを本書では「ちょっと太めのボールペンの先」と
表現するのが面白いが、ピッチャー前のバントぐらいの距離に
ボールペンの先の玉が落ちていても気付くことは不可能である。
太陽系の広さの感覚が、ひいては宇宙の広さが、
とてもとてもよくわかる。

こうやって身近なところから理解しながら、
宇宙の姿、観測の方法、そこから考えられる理論まで、
ちょっとずつ歩みを進めるようにして
宇宙全体のことを理解させてくれる、
本当にありがたい本である。
教科書にしてもいいぐらいだと思う。

本書の冒頭に、一首の短歌が紹介されている。

「空あふぎ何をもとむや」
「前の世に住みけむ星を忘れたる故」

「空を見て何を探し求めている?」
「前世に住んでいた星を忘れたから探している」

石川啄木の歌だそうだ。恥ずかしながら知らなかった。
非常にロマンティックな、ここから物語を一本書けそうな、
素晴らしい歌だと思う。

宇宙は、無機質な観察の対象というだけの存在では、
決してない。