第7回「書肆みず盛りの知りたい世界」終了しました

今年最後の「書肆みず盛りの知りたい世界」は
エッセイスト・絵本作家の澤口たまみさんを
お迎えして昨日終了しました。

大学時代に応用昆虫学を学んだ澤口さん、
その方面(つまり昆虫や動物など生き物)の
科学絵本を書くかたわら、宮沢賢治の作品を
読み解いていく著書もあり、活動もなさっています。

私の目には、2つの分野の仕事を両輪にしている、
というふうに見えていたのですが、
澤口さんのなかでは同じことをやっている、という
感覚だそうで、その時点でもう大きな発見でした。

宮沢賢治の文学作品というと、幻想的、不思議、
鉱物地質好き、星や宇宙、というあたりの
イメージが多いようですが、
難解、わかりづらい、というのもまた、
よく聞く印象のひとつです。

ですが賢治は、自然をよく見聞きし、書き留めることが
大事だと生徒たちに言っていたらしく、
昔、賢治の元教え子たち(今はそうとう年配)の方たちに
インタビューしたときにそれをたくさん聞かされたそう。
けっして、奇をてらった言葉をゼロから作り上げようと
していたわけではなく、私たちが見過ごすような
自然の音や色をつぶさに見ていたのだ、というのです。

生徒たちにそう言うように、賢治自身も
目の前の事象を素直に言葉にしただけのはずだ、
と澤口さんはおっしゃいます。
私たちには難解で独特に聞こえるオノマトペも、
その時期にその風景の場所に行ってみれば
「ああこれのことね」と腑に落ちるのだそう。

賢治の生きた岩手にいてその著書を読んで追体験できるのは、
余所に住んでいる賢治ファンに比べて大きなアドバンテージ、
とても贅沢なことだ、と。

なるほどー…そう思ってみると私の好きな話の
妙な気がしたオノマトペの部分も、実際を体感したくなります。

科学と幻想、という両端のもののように思えていた世界が、
実は根っこはひとつで表現の違いだけだった、
という発見は、アハ体験のようでとても快感でした。

絵本を書くにしても、子供騙しという言葉はあるけれど
子供こそ騙せない、車をブーブーと呼ぶ必要はない、
犬はワンワンではない、というスタンスで書く絵本の物語は、
大人にも子供にもむしろ心の奥深くまで届くような
まっすぐな光であるように感じました。

和やかな空気の中で、だいぶピリッとした
本質的な話を伺えたと思います。
澤口たまみさんは一週間前に盛岡文士劇を乗り切ったところ。
お疲れのところを楽しく話してくださり感謝します。
ご参加の皆様も、本当にありがとうございました!