リットー・ミュージック
川瀬泰雄
2019年3月22日第一版第一刷発行 B5判・256頁 本体2,200円+税
世界で最も有名なバンド、ビートルズが
リリースした曲が全部で213曲というのは、
第一印象で少ない気がした。
とはいえ、アルバム一枚に平均10曲と考えてみると
20枚前後だから、少なくはないのか…
1960年代を真ん中に約13年の活動期間であった。
その213曲、一曲残らずカバーされているとなると
これも驚く。全曲、である。
帯には“「レボリューション9」にもカバーがあった!”と
あって、嘘つけと思ったがきっちりベスト10が組めていた。
ビートルズの曲と見なしていいのかどうか疑わしい、
と言う人も未だに少なくない曲までカバーされるあたり、
ビートルズは本当に伝説のバンドなのだろう。
数年前に、「Yesterday」という映画が公開された。
売れないシンガーソングライターが大停電のさなか事故に遭い、
昏睡から醒めたら誰ひとりビートルズを知らない世界になっていて、
ビートルズの曲を歌って世界的スターになってしまう、
という話だった。
笑える筋だったから見てみたい。
海外のテレビ番組で、感想を聞かれたポールが
ちょっと怒っていたのにも笑ってしまった。
動画が出てこないが、あったら見てみて頂きたい。
気にしないと何度も口にしていたが、
あきらかに不機嫌だった。
いや、気持ちはわかる。
世界の頂点に登り詰めた自分たちを
存在しなかったことにするという話なのだから、
当事者ながら大笑いするにはけっこうな悟りがいるだろう。
でも他人事として、これはやっぱり敬意なのだと思う。
昏睡から醒めた主人公が元気になって、
気軽に弾き語りで歌ったYesterdayを聞いた恋人が、
感動のあまり号泣するのである。
予告編の一部しか見ていないが、
この曲の存在の凄さをよく表現していたと思う。
カバー曲として発表されることもそうだが、
歌は、さまざまな人に口ずさまれてその人自身の
唄になってしまうことが、愛されたことの
なによりの証明ではないか。
ビートルズの歌った歌は、一曲残らず、
口ずさんだ人たちのものになったのだ。