ウニはすごい バッタもすごい

中央公論新社
本川達雄
2017年2月25日初版発行 新書判・336頁 本体840円+税

動物も植物も、生き物の形は本当にすごい。
形状もそうだし、その形を成り立たせ、利用する仕組みもすごい。

節足動物門の章で書かれている、外殻を形作るクチクラなども
よく読むととてもすごい素材なのである。
外骨格として生き物の形状を保ち生命組織を包むだけでなく、
羽を形作ったことで移動距離は飛躍的に(羽だけに)伸び、
高い運動性能を獲得したし、タンニングを起こして硬化させた結果
ハサミや針、トゲになって、身を守り攻撃する武器にもなった。

全動物の7割が昆虫であり、生物全体まで母数を広げても半分は昆虫。
個体数でもダントツの数になる。
昆虫は節足動物門に属し、エビやカニなど甲殻類も同じ門であり、
甲殻類は海中の生物で最も種類の多い動物である。
海でも陸でも、外骨格を持つ節足動物は最も繁栄していると言って良い。

クチクラによる羽のおかげでどんどん行動範囲を広げられたのだが、
昆虫の羽と同じ薄さの金属板を、昆虫と同じ羽音がするほど
機械で細かく振動させると、金属板はあっという間に
金属疲労を起こして折れてしまう。
クチクラはそれでも平気なぐらい、丈夫な素材なのである。
その素材のおかげで、生物最大の種類・個体数を占めるに至った、
と言っても過言ではない。

なぜそんな高度な素材を体内で生成できるのか、
どうやってそれらを動かし行動範囲を広げて来たのか。

あらゆる生き物の驚くべき「異能」は、ともすれば
“進化の結果”と表現されがちである。
そして進化は、“そうなるべくしてなったもの”であり
すべてが合理的、論理的で必然であったのだと
神でも介在するかのように理解されがちであるが、
本来はそういうものではない。

同じ種の生き物が、異なる環境でそれぞれ生き延び繁栄しようと
変化を試みた結果、その環境に最適化したものが、
いま私たちの目の前に多く残っているにすぎない。
いわゆる“残念な進化”などというものは本質的には存在しない。
すごい進化だと思う変化も、言い換えれば
環境にうまくハマっただけ、とも言える。

だからこそ、「うまくハマっ」てスゴイ性能を発揮している
生き物の仕組みには驚かされるのである。
人間から見れば「なんでそんなことを!?」と思うような進化や、
「なんでそんなかたちに!?」と感じる姿でも、
その生き物の祖先から続く、生息する多様で複雑な環境への適応を
試行錯誤してきた長い長い歴史なのだと思うと泣けてくる。

本書には「デザインの生物学」と副題がついている。
これがまた良い。
デザインとは“見た目をいじくること”ではない。
形にも色にも機能にも、そうなった理由が必ずあるし、
それは必然などという硬直したものではなく、
試行錯誤と悪戦苦闘の結果だったりもするのである。

そういうことをこの本は、生態の説明と共に細かく教えてくれる。