世界はうつくしいと

みすず書房
長田弘
2009年4月24日発行 A5判・104頁 本体1,800円+税

神に祈るようにして言葉を選び、
大切なものを飾るときのように慎重に丁寧に、
言葉を並べて文章を紡ぐ。
詩人とはそういう人ではないか。

私自身は、そうまで敬虔に、厳粛に
言葉を紡いではいないが、
ブログなどで文章を書く機会は多い。
自分に詩は書けそうにないと思いつつ、
詩にも文章にも共通するものはあると感じる。

平明で、率直で、確かな言葉を、
ひねくらずにきちんと並べるのが
美しい文章だ、ということである。

煌びやかに、艶やかに、飾り立てた言葉を使う必要はない。
文脈から外れた動詞や形容詞をわざと持ち出して
気取る必要もない。


だから、カシコイモノヨ、教えてください。
どうやって祈るかを、ゴクラクをもたないものに。
(「カシコイモノヨ、教えてください」より抜粋)


一文だけ抜粋すると意味が掴みにくいが、
この詩を通して読むと、勇気を得る。
一日一日は冒険だというフランツ・カフカの言葉を引き、
日々の積み重ねである一生は途方もない冒険で、
つまりただ生きていくだけで人はみな冒険者なのだと、
全てのひとの傷だらけの毎日をいたわっている。

冒険者の心を支えるために、祈りたい。
祈るときには言葉を使う。
言葉が、神を持たない冒険者の心を支える、ということだ。

だから率直であらねばならない。
もてあそぶためのおもちゃではないのだ。