今日というより凶な今日(ほか3冊)

今日というより凶な今日(2013年5月11日第一版発行)
もうひとつの今日(2013年9月21日第一刷発行)
みぞが埋まるくらいに(2017年9月23日第一刷発行)
よくねたパン(2018年11月24日第一刷発行)

はたまた
みのわようすけ
文庫判、240頁・116頁・188頁・174頁 各本体478円+税

著者、みのわようすけさんはグラフィックデザイナーで、
書肆みず盛りにメールをくださってお取引を始めることになった。

ご自身で製作発行されるこの4作、個人製作のリトルプレスだが
装丁も美しく、紙のセレクトもそれぞれに見事で手触りが良い。

内容は、著者自身が見た夢をもとにして作った、
日記のような短編集。
最近の夢の話が4冊合計で729話、子供の頃を含めた
昔の話が43話、これらの夢をご自身が分析・解釈して
解説するパートまである。

夢の話だから、設定やストーリーがシュルレアルである。
日常と非日常が混在し、理不尽で不穏な
夢の世界観がよく出ていて、まったく飽きない。

バスケの試合で相手がペプシマンで調子が狂うとか、
押入に入って通りかかる人にクイズを出す少女とか、
調子が狂うのはこっちのほうである。じつに面白い。

違和感の残る、具体的に描きづらい夢幻の風景と世界の中で、
著者の感情だけは手に取るようにはっきりと具体的である。
悲しくなる、気持ち悪い、安心する、悪いと思う、など。

夢の中の異常な世界の中では、くどい比喩よりも
安直なほどに率直な感情のほうが、
具体的な手応えがあって安心できる。

目が覚めたあと、見ていた夢自体は朧だが
なぜか感情だけが、悲しいとか、可笑しいとか、
くっきりと残っていて我ながら不思議な朝がある。

読んで頂ければたぶん伝わるはずだが、
この4冊は「夢」そのものなのだ。
自分が見た気さえしてくるのである。
こんな面白い文章の書き方があるのか、と
読後に放心してしまった。

カルトなSFのようにディープな世界だけでなく、
「好きな人の焼きそば」の一編など
こちらの心に染み入ってくるような話もある。

なにしろ短編800話近いのである。
一晩に一話読んでも3年掛かる。
夢の中へ、寝る前に訪れてみてはいかが。