ムービー・マヨネーズ第2号 コメディ映画特集

Gucchi’s Free School
2018年発行 B5判・122頁 本体1,500円+税

Gucchi’s Free School(以下GFS)の手になる、
これは映画”雑誌”と言って良いものかどうか…
内容の充実度は、手軽な映画雑誌の比ではなく、
れっきとした映画解説本であると思う。

初号はすでに売り切れており、書肆みず盛りでは
第2号からのお付き合いとなった。
シリーズものコメディ映画通知表コーナーでは
大好きなビバリーヒルズコップも採点されており、
感じ方がまったく一緒だったので大笑いした。

映画論ばかりでなく、いろいろな企画がてんこ盛りで
掲載されているので、どこから読んでも面白い。

GFSそのものはどういうものか、というと、
「日本未公開映画の紹介、上映を企画・運営する団体」
だそうである。
そういうことを映画会社でなくてもできるのか、と
まずそこに驚く。

日本未公開だから当然、字幕も翻訳もまだないのだが、
GFSのサイト内で映画の詳細な解説を行い、
全訳ではないものの、物語の詳細を公開する。

驚愕、である。
それをやってしまう行動力と意欲、
映画への愛は、尋常のものではない。

この本も、読みながら濃厚な映画愛にむせび
眩暈がするようである。
微細でマニアックな目の付け所から展開する解説は、
作品そのものだけに限るのではなく、
通史のように背景や関連を紐付ける企画などと連動して
映画の世界の奥行きと幅をあらためて教えてくれる。

ムービーマヨネーズというタイトルは、
映画批評家アンドレ・バザンの”マヨネーズ理論”による。

マヨネーズは、卵・酢・塩・油などを混ぜて作るが、
混ぜるときの力具合によって固まってしまうか
いつまでも軟らかくいられるかが決まる。
ただ混ぜるだけでは失敗する、難しい料理なのである。
映画も同じで脚本・キャスト・天候などの要素が
うまく混ざり合わないと失敗する。

なるほど、映画という作品のありようもそうだが本書も、
好きで好きで、語りたくて語りたくてたまらないことを
早口でできるだけ詰め込んだ映画好き同士の会話、
のような構成が、まるでマヨネーズのようである。