晶文社
島田潤一郎
2014年6月30日発行 B6判・288頁 本体1,500円+税
はじめて島田さんのことを知ったのは、
10年以上前のはずだ。
ブログを読んだり(今はもう閉鎖されたブログもあった)、
各所に寄稿されたものやインタビューを読んでいた。
いわゆる文学的な、文人・詩人のつづる「もの悲しさ」
みたいなものとはまた違う哀しさが、
島田さんの言葉にはいつも流れている印象があって、
かといって湿度はいつも低く、からっと感じられた。
その理由が、本書に全部書いてあるような気がする。
出版社を始めるまでの、ご自身の歩んできた道と
考えたことが順に書いてあって、読んでいるこちらが
追体験するような気持ちである。
「就職しないで生きるには21」という晶文社のシリーズに
含まれる本書だが、ノウハウものだと思うと間違う。
出版社を立ち上げて食っていく方法、など一切書いてない。
あくまでも島田さんがしてきたことが描かれているだけで、
真似しても同じ結果は得られない。
淡々と、こういうふうに生きてきた人がいる、という、
単純なテーマで秀逸に綴られたエッセイである。
「さよならのあとで」が作られていく過程、
挿画の高橋和枝さんの苦しみなどは、
それを乗り越えてあんなに美しい本が出来たことが
奇跡に思える。
その奇跡に勇気を得て、これから先を自分に正直に
生きていくための本である。