南極探見500日 岩手日報特別報道記録集

岩手日報社
2023年5月5日第1刷発行 B5横判・108頁 本体1,400円+税

岩手日報本紙の記事を最初から追えていたわけではないが、
知ってからは折に触れて読んでいた記事、
「岩手日報・南極支局」
2021年11月に出発した第63次南極地域観測隊の
越冬隊に、岩手日報社・菊池健生記者が同行して
取材・発信していた。

元宇宙飛行士の毛利衛さんが南極の昭和基地に
招待された際(2007年)に、
「宇宙には数分でたどり着けるが、昭和基地には
何日もかかる。宇宙よりも遠い」と言ったのが有名。
(その台詞をタイトルにしたアニメがあるらしい、
まったく知らなかった…)

そうでなくたって極地である。
気候が厳しいのは察するに余りあるし、
私の世代でもタロとジロの南極物語は有名だ。
(ちなみに1991年の南極条約で動物の渡航が
一切禁じられたので、いまは連れて行くことが出来ない)

その苛烈さゆえに人為的な変化が極端に少なく、
地球環境の変化に対するサンプル、センサーのような
存在になっているのが南極である。
もちろん農業など出来るはずもないから
食糧事情も他の大陸での生活とはまったく違う。
医療体制も、娯楽も通信も限定的だし、
そもそも店などないから必要な物は自力で作る。

そんな条件の中、しかも期間が1年半の越冬隊に
地方新聞社から初めて同行したのが地元・岩手の記者、
というのだから興奮もしようというものである。

菊池記者が帰国したのは2023年3月、
つい先月のことである。
間髪を入れずに発行された本書は、
連日配信されていた記事の焼き直しでは決してない。
もちろん、南極観測の実際とか地理環境とか、
過去に他の媒体でも語られてきた内容のことも
中にはあるが、それらだって実際にごく最近に
撮影された写真とリアルタイムに近い情報として
受け取れば、自分に入ってくる深さが全く違う。

そしてなにより、文明の利器だなあと思うのが
いわぽんリーダーを使った画像・動画の読み込みである。
調査のための掘削現場建設状況のタイムラプスとか、
オーロラとかの映像がかなり綺麗に見られる。
技術的にはもう大して難しいことではないのだろうが、
読書体験としてはやっぱり興奮する。

これを読んでまた、岩手の子供や若い人が
南極を目指してくれるといいなあ、と心底思う。