南極のさかな大図鑑

福音館書店
岩見 哲夫 文 / 廣野 研一 絵
2020年6月20日 第1刷発行 26×20cm・48頁 本体1,300円+税

南極海の境界線はいまでも厳密には確定していない。
詳細は省くが、いずれにせよ他の海域より水温も
2~3℃低く、塩分濃度も濃い。
そのうえ偏西風の影響で海流も荒れやすく(南極周極流)、
結果的に、生き物が他の海域と行き来しづらく、
独特の生き物も多く生息している。

クジラやペンギンなど、有名で大きな生き物ではなく、
海の中にいるその“独特な魚たち”を、
綺麗で細密なイラストで紹介したのが本書。

「絶叫する60度、狂う50度、吠える40度」※度数は緯度
とも言われて荒れる海域では、海中の魚の撮影も
非常に難しいのだと思う。
だから絵で描かれているのかもしれないが、
写真よりも絵で描かれているほうがかえって、
暗い海の中で豊かに暮らす魚たちの様子が
ゾクゾクする感覚とともによく伝わってくる。

深海魚のような、不思議なかたちの魚が多く、
その生態も私たちが普段よく見る魚とは
やっぱり大きく違うようだ。
なにしろ、海水表面温度が零下にまで下がる海の中で、
彼らの血は凍らない!
とても不思議なこの特徴もしっかり解説されている。

本書の扉に描かれた一匹の魚のスケッチ。
その逸話と正体もまた、とてもとても興味深い。

たった48ページの絵本のような本は
基本的には子ども向けに作られた
「たくさんのふしぎ」というシリーズの一冊だが、
大人が読んでも充分に読み応えがある。
さすが福音館書店。