さんりく 海の勉強室

岩手日報社
青山潤・玄田有史 編 / 木下千尋 イラスト
2021年4月1日 第一刷発行 AB判・102頁 本体1,300円+税

子ども向け新聞「日報ジュニアウィークリー」に
連載していた内容を一冊にまとめただけあって、
読みやすくわかりやすい。
前提となる専門知識が膨大なはずの世界を
かみ砕いて説明する専門家の方たちの努力には
いつも頭が下がる思いがする。

海の本だから当然、生き物の話がメインに来ているが
ただそれだけの本ではまったくない。
海流のこと、海水のこと、海にある元素のこと、
プランクトンの役割など海がどういう仕組みで
そこにあるのかがしっかり説明されている。
磯ラーメンという沿岸独特の食べ物を題材に、
具材などから海と生活のつながりを考察する。

わかりやすく書いてあっても、内容はまったく
子供だましではない。
薄さのわりにすごい本だなあ、と思って読み返したが、
「はじめに」で感動した。

2011年の震災のあと、“三陸の基盤であるはずの
「海」と「若い人」の間に目に見えない溝を感じ、
少しでも海と子どもたちの距離を縮めたい、と思い
連載が始まったのだそうだ。

編者・青山潤さんたち東京大学・大気海洋研究所を
はじめとする機関の研究者たちが
地元の自然をここまで大切に考えてくれていることを
心強く思った。

これから読む方には、ぜひ「はじめに」をじっくり
読んでみて欲しい。

知識と精神は別のものと思われがちだが、
知識と心は結びついてはじめて、正しく積み上がり
深められていくものなのだ。