菓の辞典

雷鳥社
長井史枝 テキスト / いのうえ彩 イラスト
2022年12月15日初版第1刷発行 A6判・256頁 本体1,500円+税

食べたことがあるお菓子のなかで、
最も美味しかったと記憶しているのは
小川軒のレイズンウィッチ(代官山)。

食べたことないお菓子で食べてみたい、
最初に思いつくお菓子はカンノーリ。
「銃は置いていけ、カンノーリは持ってけ。」
が印象深い。(ゴッド・ファーザー)
マフィアでさえも大事にする伝統菓子、気になる。

日常的に買えるお菓子でいちばん好きなのは、
アルフォートのビター味。

子どもの頃からお菓子はあまり食べないほうだったが、
それでもこれだけぱっと思いつく。
お菓子というのは人々の生活にそのぐらい
根付いているものなのだとしみじみ思うが、
それもそのはず。

本書はお菓子の起源や変遷を美しいイラストとともに
解説する構成になっているのだが、
そのなかでも最古のお菓子は紀元前12世紀のもの。
ラムセス3世(古代エジプトの王様)の墓の、
壁画に描かれたものだという。さすがにイラストはない。

そんなに古くから、人間はお菓子とともにあったのだ。

最近ブームになったマリトッツォも、
古代ローマからその名はあったそうである。
形状はずいぶん違ったようだが。

甘いもの、美味しいものへの執念と追求は
人間の本能だったのだろう。

いやほんとに、どれも美味しそうである。
それにしても不思議なのは、イラストのお菓子の
いかにも旨そうなたたずまいである。

レシピ本の写真も美味しそうには見えるが、
イラストで描かれたお菓子には想像の余地があるからか、
自分の味覚、好みにぴったり合っていそうに見えて
ちょっとたまらない。
夜中に読むのはお薦めできない、禁断の書である。