あたらしいアロマテラピー事典

高橋書店
木田順子 著 / 川副美紀 イラスト
2021年8月30日発行 B5判・223頁 本体1,500円+税

私が学生時代とかの若い頃に、
“アロマテラピー”という言葉が突如として
流行りだしたような気がしていたが、
ちゃんと調べるともっと前、80年代には
広まっていたようである。

知ったばかりの当時は良い匂いの植物油とだけ
認識していて、売り場のサンプルを嗅いで
気に入ったのを買って帰った。

陶器の、かまくらのように横に穴の空いた筒の上に
同じ陶器の皿を載せて、さらには水とオイルを垂らす。
火の付いたアルミカップのキャンドルを筒に入れれば
皿の水と油が蒸発して良い匂いがする、というのを、
若い頃の私も持っていた。
まわりの同年代もみんな持っていた。
ときどき気分が良くなる、程度にしか使っていなかったが、
たまに部屋を暗くして火を灯すと気分が良かった。

オイルはイランイランが好きで、サンプルを
良い匂いだと思ったから買っただけだったが、
催淫効果があるのを選ぶとは嫌らしい、などと
人から言われて不愉快だった覚えもある。
ちょっと聞きかじったぐらいで物知り面をする、
嫌いな奴だったから無視したが、気に掛かりはした。

みんなが、まともな知識もないまま、
なんとなくもてはやしていた。
あの当時にこの本があったらどんなに良かったろうか。
調べてみたら、本としてよくまとまった物は
案外出てなかったようなのである。

さまざまな植物香油の来歴、成分、効能、使い方が
見開きで読みやすく書いてあって、大きく真ん中に
川副美紀さんの美しいイラストがある。
これだけでもう、覚えやすくて実用的である。
さらには香油の歴史、実践的な使い方、体調の症状別に
お薦めの使い方なども書いてある。
奥の深い世界だったと、今更ながら
目から鱗の落ちる思いである。

アロマオイルを焚くのが好きでよく使うが
あんまりちゃんと調べたことがない、という方には
大変お薦めの書である。

なんたってこの本には、イランイランに催淫効果があるとは
書いていなかった。数十年来の靄が晴れた思いである。