岩手日報社
泉秀樹 原作 / 山田えいし 作画 / 板谷英紀 監修
1989年5月25日初版発行 A5判120頁 本体650円+税
むかしよく読んだ、学研などの歴史まんがを
ありありと思い出した。
画風もそうだし、話がものすごく速いテンポで
進んでいくあたりも懐かしい。
と思って奥付を見たらそれもそのはず、
1989年初版発行、もう34年もの間ロングセラーの
本である。現在、12刷。すごい。
郷土の偉人であるし、どこの学校にも置かれるような
タイトルなのだろう。
岩手県に生まれ育ったからといって、私たちの世代は
賢治の生涯をじっくり教わったわけでもないし、
みずから調べる機会も持たずに来たので
案外よく知らない。
あらためて読んでみたが、これが思いのほかに
面白いのである。
賢治のことを知らなすぎるのも一因だろうが、
郷土の偉人だからといってむやみに礼賛するでもなく、
けっこう淡々と“どう生きたか”を描いている。
賢治本人も家族の事情と軋轢で大変だったろうし、
まわりの友人知人・家族たちもけっこう振り回されて
大変だったろう、などと感想を持つ始末である。
作品だけ読んでいると、なんだか人柄まで
作品そのもののような印象をもってしまうが、
宮沢賢治も現実に生きた、それも過酷な環境で
けっこうしんどい人生を生きながら
自分の信じた道を歩こうとした、一人の人なのである。