野ばら社
1990年7月20日初版発行 四六判・368頁 本体660円+税
花の姿を簡略化して描いたイラスト、
さらにデフォルメして模様のようにした図案、
さらにさらに、連続させてより模様らしくしたもの、
花のイラストを文字と組み合わせたデザイン、
花モチーフの家紋…
どこかで見たような懐かしいデザイン、模様、
イラストが山ほど載っていて見飽きない。
ひとくちに花と言っても、デフォルメしながら
こんなにあちこちで使われ、馴染み、
街中の彩りになっていたのだな、と実感する。
こうしてみると、自然界で花ほどデフォルメして
素材になりやすい、使いやすい存在は他にない。
魚や鳥や獣ではこうはいかないのである。
自然にある姿そのままに、細密に写し描くのは
素晴らしい技能であり、その作品は常に美しいが、
よく出来たデフォルメの凄さ、素晴らしさは
また別種の感動がある。
菊の花弁を単純な形状の放射線に描いた発想。
桜の花弁を先割れの細長いハートで描いた見立て。
薔薇の花びらの表現も何通りもある。
ひと目でそれとわかるようにきちんと変形し、
単純化・簡略化できているところとかも、
観察力の鋭さを物語っていてため息が出る。
図案やイラストは、単に可愛いだけの存在では
ないのである。