岬書店(夏葉社)
執筆者 武田砂鉄 / 山下賢二 / 小国貴司 / Z佐藤晋
馬場幸治 / 島田潤一郎 / 大石トロンボ
2020年5月25日第一刷発行 小B6判・182頁 本体1,300円+税
10代後半の頃、周囲にブックオフはなかった。
90年代の最後の頃だったので、たぶん岩手にはなかった。
20歳で上京して初めて存在を知ったが、
サブカルチャーや流行りの音楽には疎く、
都会には何かがあると信じて田舎を逃げだしただけの
典型的なおのぼりさんだった私には、
街のブックオフよりも神保町の古本屋のほうが
居心地がよかった。
人生の通算でも30回入ったか定かでないぐらい
ブックオフに縁のなかった私にとって、
本書で語られるブックオフで過ごした青春とその愛は、
理解の範囲を超えていて面白い。
特にホホホ座の山下さんと夏葉社の島田さんの対談は
笑った。
『そうですそうです。シドニィ・シェルダンとか。』
(本書30頁)のところで声を出して笑った。
単純に古本屋、中古品屋というのではないのである。
古い本に目の利く古書店主には出せない、
えもいわれぬカオス。
私にとってはなんとも言えない中古品の匂いの
あまり愉快でない印象しかない店舗が、
ファンにとっては予想外の発見の連続で
目眩くカオスのワンダーランドなのである。
さっぱりわからない。
そのカオスのなんたるかは、本書を読んだ上で、
お店に行ってみるしかなさそうである。
もしかしたら、これは沼かも知れない。