夏葉社
本屋図鑑編集部 編
2014年12月20日発行 四六判・248頁 本体1,700円+税
電子書籍が普及してきた、と実感を強くしたのは、
震災後のことだったと思う。
それから、紙の本は無くなるのか、という問いかけは
あちこちで聞かれるようになった。
その道筋とほぼ重なるようにして、
町の本屋さんの苦境が目立つようになった。
地方都市のほとんどは大型ショッピングモールや
国道などのロードサイドにチェーン書店があって、
皆そこへ、車に乗って本を買いに行く。
そして何より、Amazon。
自宅に居ながらにして、自分の欲しい(とおぼしき)物が
待っているだけで手に入る。
書店に出かける必要がなくなったわけである。
1979年生まれの私でも、
幼少の記憶にある買い物と現在の購買行動とは、
ずいぶん形が変わった、と実感する。
この大きな変化は、本屋さんに限らず
すべての小売業に共通しているだろう。
歩いて移動する道すがら、なにか自分の感覚に
引っかかるものが目に入って立ち止まる、
そういう経験が街から激減した。
スマホで情報(のようなもの)が、
無料で、大量に、一瞬で手に入り、
それを目的に行動する。合理的ではある。
だからといって、非合理的な町の本屋さんは駆逐され、
消え去ることになる、とは、私は思わない。
以前から、確たる理由もなしにそう思ってきたが、
その理由が、この本に書いてあった。
ある書店主は、本屋は入り口であると言う。
まったく興味の無い分野の専門書や入門書。
人生の一時期しか使わない学習参考書。
あまり好ましくないような思想の本までが、
本屋さんには等しく置いてある。
文化に貢献する、などと大げさにするのではなく、
本屋さんはあらゆる考え方に触れる入り口で、
誰が来てもよくて、その場所で今まで知らなかった
考え方や物事を知り、興味を持って本を買っていく。
その入り口なのだ、と。
入り口の全てを失ったら、誰もどこへも行けない。
知らなかった世界へ行きたい人がいる限り、
本屋さんは消え去ることはないのだ。
そういえば、本をひらく動作は、扉をひらくのに似ている。