本へのとびら 岩波少年文庫を語る

岩波書店
宮崎駿
2011年10月20日 第一刷発行 新書判・180頁 本体1,000円+税

―子どもたちに、この世は生きるに値するんだということを
伝えるのが自分たちの仕事の根幹になければいけない―

後に撤回した引退を発表する会見で、宮崎駿はこう言った。
たぶんアニメに関わった最初からそういうことを
思っていただろうし、今でも思っているだろう。
作品を見ればそのことがよくわかる。

衒いもなく、真っ直ぐな少年少女の勇気の物語を
六十代になっても七十代になっても描き、
八十代の今でも描こうとし続ける姿勢は、
生半可な思いでは保ち続けるのが難しいだろう。

子どもを神聖視して甘やかし、純情無垢なら
全てが許されるとでも言いたいかのような、
曖昧でお気楽で無責任な思いとも全く違う。

本書は岩波少年文庫創刊60周年と
『借りぐらしのアリエッティ』公開を記念して
2010年に企画された展示の書籍版である。
企画され、書籍になるまでの間に震災があった。

そのときのこととこれからのことについて、
世の中に対して、大人に対して、宮崎さんは辛辣だ。
それでもこの世は素晴らしい、と伝えるために
児童文学はあり、ジブリアニメもある、と思うと、
何十年も経て何度も観た作品が、これまでとは違って見える。