十七時退勤社
花本武
2022年5月29日発行 15cm×13cm・84頁 本体1,500円+税
まずなにしろ、造本が良い。
グレーのボール紙が表紙と裏表紙に使われていて、
背を巻いている紙との色のコントラストも良い。
持っていて嬉しい本である。
花本さんは同年代だと思われる。
出てくる話題がだいたいわかる。
「サッカー」の章では赤べこのように頷いた。
ドゥンガとかカントナとかカンポスとかが、
名の通りの風貌をしている、というあたりは
まったく同じことを思っていた。
もうちょい後の選手だとガットゥーゾなんかは
風貌もプレースタイルもどう見ても、
フランチェスコとかフィリッポとか、
トッティとかインザーギとかではあり得ない。
見るからに、ジェンナーロ・ガットゥーゾなのである。
そういう感覚みたいなものは人それぞれにきっとある。
本のことも、同じような感想を書いておられて嬉しい。
津村記久子さんの細かい日常の表現がいちいち可笑しいし、
キルヒャーを初めて見たときは尋常ではない、と思った。
ついでにいうと「キルヒャーの世界図鑑」を出版した
工作舎さんも本当に好きである。
内澤旬子さんの「飼い喰い」は衝撃の一冊だったし、
「しくじり審判」はむちゃくちゃ面白かった。
くっだらない下ネタも書いておられたりするけれど、
それも含めて時代の共有みたいなものも感じる。
十七時退勤社の名付け親で、言語センスがものすごい、
と思うし、共感すると言っても背中を眺める相手だが、
本屋さんて面白いな、としみじみ思う。