日日是製本2019,2020,2021

十七時退勤社
笠井瑠美子
2019年11月24日 第1刷発行 A6判・40頁 本体1,000円+税

色合いも手触りも美しい紙を
糸かがり綴じで小さな冊子に作ってある。
たたずまいが素晴らしい。

登場人物の描き方も余韻がある。
ことさら季節を描くでもないが
日々の移ろいを感じる。
表題が日日であるとおり、これは日記なのだろう。

電子書籍があれば紙の本はもう要らない、と言う者も
増えてきたが、まったくそうは思わない。
市場は小さくなるだろうが、消滅はしない。
物質として存在する紙の本だからこそ、
「本の中盤あたりの左ページ終盤あたりに書いてあった」
という、手触りをともなう記憶が残り、
言葉や情景が頭に入ったり、それが自分の発想の元として
生きてきたりするのである。
電子化された情報ではこうはいかない。

ググればいいでしょ、のその先には、
AIに駆逐される未来しか待っていないのだ。

『製本は「紙の本」がモノであることのすべてを
請け負っています。』の一文の重みが、
この小さな冊子からずっしりと伝わってくる。