たどり着いた夏

十七時退勤社
橋本亮二
2021年11月23日 第1刷発行 A5判・114頁 本体1,100円+税

千葉県佐倉市の七井戸公園は、
最寄り駅から20分ほど歩くところにあるらしい。

公園や、そこへ至る町並みなどの雰囲気が
芦屋のようだ、と、ときわ書房の書店員・日野さんが
おっしゃったそうである。

佐倉市に俄然、行ってみたくなる。
芦屋には一度行ったことがあるが、良い町だった。
住んだことはないので余所者の
ぱっと見の印象でしかないが、たしかに良かった。

風景や光景が目に浮かんで、
著者の橋本さんが体感したであろう空気まで
なんか感じた気になってしまう。
いつも思うが、橋本さんの文章は描写が凄い。

「うもれる日々」「本を抱えて会いに行く」と続く
橋本亮二さんのエッセイ集、第3作。
またしても、身近で面白い。

ある一編に、幼少期の記憶として
幼稚園の中庭に大きなウシガエルがいた、
ということが書いてある。
笑ってしまったが、こういうところが
自分には欠けていると気づいて笑いが引く。

昔のこと、細かいこと、日々のこと、さもないこと。
そういう小さなことを覚えておいて、
珠をつないで首飾りにするようにして
文章に日常が描かれていく。
十七時退勤社のお二人には常にそれがある。
だから人の心に届くのだ。

本書や前作には、『歩きながら携えていた本』
として、橋本さんがその期間に読んだ本も
列記されている。
こういうところから真似しなくてはならない。
読書日記、付けよう。