ドアノーの贈りもの 田舎の結婚式

河出書房新社
ロベール・ドアノー 著 / 平松洋子 監修
2013年9月20日初版発行 B5判変形・80頁 本体1,200円+税
※バーゲンブック:出版社の意思により割引が可能になった本、
 古書ではなく一度も読者の手に渡っていない新本

4月14日はロベール・ドアノーの誕生日。
1912年、ジャンティイで生まれた。

パリ郊外の町、といえば聞こえは良いが、
ロベールが生まれた時代のジャンティイは
パリとは城壁で区切られバラックの建ち並ぶ、
スラムは言い過ぎだが、貧民街だったそうだ。

いまはパリの一角の住宅街として組み入れられて
人口過密地帯になりずいぶん変わったようだが、
ロベールはその故郷を愛し続けた。
それは、そこに住む肉体労働者への優しい眼差しの
裏付けにもなったのだろう。
そのことが、本書を読んでようやく腑に落ちた。

ドアノーといえば「パリ市庁舎前のキス」という
強い印象があり、あまりにも出来すぎた構図が
いまいち入ってこなかった。
あんなに商業的な感じの写真を撮った人が、
芸術ぶっていないイイ写真を撮る、というのが
意外というか、誤解してしまっていたのだ。

本書を監修した平松洋子さんも同じ印象だったようで、
安心した、というわけではないが腑に落ちたのだった。
この結婚式の写真集は、構図が“芸術的”なわけではない。
というか、美しいのだが、作為は感じない。
写っている人々の表情を見れば、それはすぐにわかる。
被写体への愛情や好奇心が本当に強い人で、
それが伝わる写真家だったのだろう。

大変に有名な写真家だったのだが、
誤解をし続けていたのが申し訳ないぐらい、
優しくあたたかい、或る人々の人生の記録である。