東山絶滅動物園

三恵社
著 佐々木シュウジ / 写真 武藤健二
2016年04月21日発行 B5横判・128頁 本体1,800円+税

“イケメンゴリラ”として有名になった
ニシローランドゴリラのシャバーニ。
2007年、オーストラリアの動物園から
繁殖のため名古屋市の東山動物園に来日した。

SNSに投稿された写真は、顔立ちがキリッとして
確かに大変な男前であった。
有名人も投稿するにいたって有名になり、
写真集や商品パッケージに採用され、
ついには名古屋市の職員募集ポスターにも使われ、
商標登録までされるに至る。

シャバーニに限らず、人に馴れたゴリラは
人なつこくひょうきんで、温和で繊細、
という性格もあって好かれやすい。
だが自然状態の生育環境では、過酷な状態が続いている。

ヒトに近いからか、エボラウィルスによっても
個体数を激減させているし、ヒトによる狩猟も
変わらず原因のひとつのままだそうだ。
この30年近くで6割近い減少率とも言われる。

動物園には、レクリエーション、教育、種の保存、調査研究の
4つの機能があり、生き物を見て楽しむことももちろん
立派な主目的ではあるのだが、少し意識をしたいのは
そこにいる動物の多くは、減る一方だという事実だ。

「野の生き物語」でも書いたことだが、
子供の頃は自宅の目の前にキジがいたしホタルもいた。
ドライブすると国道でもちょっと山のほうへ行けば、
道路脇の断崖のような斜面にカモシカがいた。
ほんの30年ほど前、先は本当に多様だった。

会社でも地域社会でも自然環境でも、
個性が多様なほうが良いのは疑問の余地がない。
状況も安定するし、変化に強くなるし、
それが結果的にいろいろな意味での健康・健全を生む。

効果があらわれるまでに時間がかかるから
実感はしづらいが、とても身近なところから
世界は良くしていけるのだ。